金融とは資金の融通をすること
金融の世界ではお金を必要とする人々と、大きなお金を持っている人々がお互いに支え合っています。
金融機関がお金を持つ人と、お金を必要とする人の橋渡しをすること、つまり資金の融通を金融と呼びます。お金の支え合いは、生活の質を向上させ、経済を発展させるために不可欠なものといえるでしょう。
お金は経済で成り立った社会の血液のようであるともいわれます。
お金の流れが止まれば、経済はもちろん人や国の活動も止まってしまいます。
銀行はお金を必要としているところに、血液であるお金を心臓のように送り込んでいるポンプの働きをする、なくてはならない存在です。
この記事では、金融に関する概念を解き明かし、銀行が経済においてどのように位置付けられるのかを探っていきます。
直接金融と間接金融の違い
直接金融とは、資金を必要とする人々が金融市場を通じて直接、投資家から資金を調達する方法です。
株式や社債をお金が必要な企業が発行し、購入する個人から直接資金を調達しているため直接金融とよびます。
一方、間接金融はお金が必要な企業へ銀行や信用組合などの金融機関が仲介となり、個人からの預金を融資する形式です。
銀行を通じて融資を受けるため、間接金融といわれています。
一般的に直接金融より間接金融のほうが、お金を出す側としてはリスクが少ないですがリターンも低くなる点は把握しておきましょう。
直接金融と間接金融にはどんなメリットがある?
直接金融と間接金融は、それぞれ独自の利点を持ち、経済に多様性と選択肢を提供します。
直接金融は、株式や債権を発行し企業が例えば大きなプロジェクトに必要な資金を集めるための効果的な手段を提供します。
資金によって企業は成長を加速させ、新たなイノベーションを生み出せるでしょう。
一方、間接金融は、特に中小企業や個人にとって、よりアクセスしやすい資金調達の方法を提供します。
金融機関はリスクを分散し、安定した融資を行うことで、経済全体の安定に寄与しています。
- 直接金融のメリット
- 企業は資本市場から大規模な資金を調達できる。
- 投資家は企業の成長に直接貢献し、リターンを得るチャンスがある。
直接金融では、投資家は収益性が高くなる特徴を持っています。
- 間接金融のメリット:
- 資金需要者は、金融機関を通じて安定した資金調達が可能。
- 預金者には、預金保険による安全性が提供される。
間接金融では、お金を貸した側がお金が返ってこないときのリスクを銀行が負います。
銀行が破綻しない限りは、預金者の預金は守られた状態といえるでしょう。
金融経済とは生産活動での金融の影響や仕組み
金融経済とは、社会の生産活動において金融が与える影響や仕組みのことをいい、資金経済とも呼ばれるものです。
金融資産の価格形成や市場取引のシステムなどによって効率的な資金配分が可能になり、経済成長を促進する重要な役割を果たします。
具体的な金融経済とは、資金の融通での金融機関の仲介、企業の財務・投資等のことをいい、実物やサービスを取引する実物経済と対比されるものです。
金融経済の健全性は、企業の成長、雇用創出、そして個人の生活水準の向上に直接影響を及ぼします。安定した金融経済は、社会全体の福祉向上に貢献するのです。
金融経済に関わる様々な組織
金融経済は、私たちの日常生活やビジネス活動に不可欠な役割を果たしています。
この複雑なシステムを支えるのは、銀行、日本銀行、株式会社、証券取引所、証券会社、そして政府機関など、多様な組織です。
金融経済に関わっている各組織はそれぞれ異なる機能を持ち、お金の流れをスムーズにし、経済の安定と成長を促進するために連携しています。
金融経済に関わる組織は、どのように金融経済全体の健全性を保っているのでしょうか。
銀行・日本銀行の重要な役割
銀行は個人や企業に貸出しを行い、預金を受け入れることで金融活動の基盤を形成しています。
大手都市銀行、地方銀行、ネット銀行などが代表的なものです。
日本銀行(中央銀行)は、国の金融政策を担い、銀行間の取引を通じて経済を安定させる重要な役割を果たしている存在といえるでしょう。
また日本銀行はお札の発行を行う発券銀行であり、金融機関から預金を預かって金融機関に貸出を行っているため、一般の銀行とは異なります。
日本銀行は「銀行の銀行」と呼ばれていることもあって、物価の安定や経済の健全な発展に貢献し、金利の調整や市場への資金供給を行います。
株式会社の経済における役割
株式会社は、株主から資本を集めて事業を行う組織形態です。
株主は投資した資金に対して企業の利益(配当)を受け取る権利を持ちます。
「公開会社」であれば、株式を公開し(上場)、証券取引所で取引されるため投資家がいつでも株式の売買が可能です。
そのため、公開会社は大規模な資金を調達でき、事業拡大や新たなプロジェクトへの投資が可能になります。
「非公開会社」は株式を上場していません。株式会社すべてが株式を公開できるわけではなく、証券取引所などが定める一定の基準を満たし、審査に合格する必要があります。
多くの株式会社の経営者は、事業展開を有利に行うために、株式公開を大きなステップと考えているのです。
証券取引所・証券会社では株式や債券の取引関連業務が行われる
証券取引所は、株式や債券などの証券が公正かつ透明なルールのもとで取引される場所です。
証券取引所では一定のルールに従って多くの注文を集中させられるので、投資家が安心して取引できる場所となっています。
日本の証券取引所には、札幌、東京、名古屋、福岡があります。現状はインターネット取引に移行していますので、以前のような場立ちといって手振りで売買注文をする現場は見られません。
また証券会社は、投資家と発行市場や流通の間で仲介役を果たし、取引の実施や投資アドバイスを提供します。
証券会社は法律上では「金融商品取引業者」といい、様々な業務を行っています。
証券会社は投資をする方にとって身近な存在で、重要な役割を果たしているのです。
その他の関連組織も金融経済に重要な役割を果たしている
金融経済には、銀行や証券会社以外にも多くの関連組織が存在します。たとえば、信用組合、保険会社、年金基金、格付会社、投資信託会社などがあります。
各組織は、それぞれ特定のニーズに対応した、きめ細やかな金融サービスを提供しています。金融経済に関連した組織が多くあることで、金融システムの多様性と安定性がさらに高められているのです。
財務省は財政政策の策定と実行を担う
財務省は、国の財政政策の策定と実行を担う政府機関です。税収の管理、国債の発行、そして国の予算の管理を通じて、国内経済の健全性を維持しています。
また公共的なサービスの提供により国民生活を支えています。
他にも、政策として必要な事業への資金供給を行っていたり、国際通貨システムの安定を図ったりしています。
財務省は、国の経済活動に直接影響を及ぼし、長期的な経済成長を支える基盤となっている存在です。
金融庁は金融市場を監督管理
金融庁は、金融市場の監督管理を行う政府機関です。
銀行、証券会社、保険会社などの金融機関の健全性と透明性を保つことを目的とした業務を担っています。
金融システムの安定、金融仲介機能、利用者保護、市場の公正性と市場活力の両立などを通じて金融行政に取り組んでいるのです。
金融庁の主な業務には下記のものがあります。
- 金融制度に関する企画・立案
- 金融機関への検査や監督
- 金融商品の取引ルールの設定と監視
- 企業会計基準設定や公認会計士等の監督
金融庁は、金融機関が法律や規則を遵守して運営されるように監視し、消費者保護を強化することで、金融システムの信頼性と安定性を確保しています。
経済活動における銀行の役割
経済の発展には、安定した金融システムが不可欠です。金融システムの核心にあると言ってよいのが銀行で、経済活動に果たす役割は多岐に渡ります。
銀行は預金者のお金を安全に守りながら管理し、必要な時には資金を貸し出し、さまざまな支払いをスムーズに行うための機能と仕組みを持っています。
銀行の機能や仕組みが経済活動にどのように貢献しているのかを見ていきましょう。
預金業務はお金の運用手段を提供する
銀行の預金業務は、貯蓄を安全に保管するだけでなく、保管したお金を運用して収益を生み出す手段も提供しています。
預金する人たちは、銀行に預けることで盗難リスクを回避でき、自分で警備を付けたり警備コストを気にする必要がありません。銀行は預金を企業に融資して収益をあげ、預金する人に利息を付けて戻します。
具体的にお金を預かる方法には下記のものがあります。
- 普通預金:日常的な取引に利用。
- 定期預金:一定期間、お金を預け入れることで利息を得る。
- 投資信託:専門家が運用し、預金以上のリターンを目指す。
お金を預ける方は、各銀行の預金における金利の違いや投資信託のリスクを把握したうえで、より自分に利益がある運用手段を利用することになるでしょう。
銀行の運用サービスを通じて、個人の資産管理が行われ、経済全体の資金循環に大きく貢献しています。
貸出業務では資金調達機能を果たす
貸出業務は預金業務に加えて、銀行のもう一つの重要な機能です。
企業や個人が新たな事業を始める際や、家を建てる際など、大きな資金が必要になったとき、銀行は重要な資金源となります。
貸出の種類の主なものとして以下があります。
- 住宅ローン
- 事業資金ローン
- 教育ローン
- カードローン
各ローンは申し込み者が目的に応じて、担保や保証人が必要か、金利や利用できる限度額等ローンスペックを確認し、適切なものを選びます。
銀行は申し込み者の返済能力を判断し、貸付額や返済期間を決定します。双方の同意があった場合に契約成立となります。
お金を借りた個人、企業、地方公共団体等は、銀行に対して利息を支払います。
利息がまた別の資金へとなり、経済活動が大きく循環しているわけですね。
決済機能で安全に経済活動を効率化
銀行の決済機能は実は多彩なものがあり、個人や企業の日々の経済活動をスムーズかつ安全に行えるようになっています。
決済機能の代表的なものには下記のものがあります。
- 振込
- 手形・小切手
- 電子記録債権による決済
- 口座振替(自動引き落とし)
例えば、銀行間での資金移動や、オンラインでの支払いなどは、現代の経済社会には欠かせないサービスです。
企業が大きな金額のものを支払うだけでなく、個人としても公共料金の支払いなど日常生活で頻繁に利用している機能といえるでしょう。
銀行の決済機能があるため、預金者も支払いや受取に時間や労力を費やす必要がなく、盗難の心配もありません。
銀行の支払い決済手段が、取引の速度と効率、安全性を保っているため、誰にとってもなくてはならない存在です。
銀行が倒産したらどうなる?
銀行がなければ、経済は大混乱に陥るでしょう。預金の安全が保証されず、資金の貸し出しが停止し、日々の支払いさえ困難になります。
銀行も企業ですから、破綻する可能性もあります。
銀行が破綻すると経済活動の基盤が揺らぎ、信頼性が失われることで、経済の停滞が起こってしまうでしょう。
銀行がなかったら、経済にどんな影響があるのでしょうか。
もし銀行がなかったら経済活動はどうなるか
銀行がこの世に存在しなければ、経済活動は下記のようになると言われています。
- 預金の安全が不確実になる
- 資金の調達が困難をきたす
- 日常の支払いが不便になる
具体的な例をあげてみます。
銀行で融資を受けられないので、企業はお金が貯まるまで製品を作れません。
工場を作る、設備投資をするといったスタートを切れないのです。
また、国は道路や橋などの社会基盤の整備をできなくなってしまうでしょう。
インフラは大きな費用を必要とするものですが、貯まるまで待つとなるとどれくらいの年数がかかるのか予測もつかないですね。
個人は安全にお金を貯めることは難しくなり、車や家など大きな額の買い物もできなくなります。
また日常的な支払いや決済でも支障をきたしてしまうでしょう。
銀行がない状態は、国、企業、個人どの立場からも現実としてありえない状態と言えます。
銀行の仕事は変化している
金融業界は、テクノロジーの進化とともに変化しています。
銀行を取り巻く環境は変化し続けており、これまでと同じビジネスモデルでは収益を上げるのが難しくなっているのです。
そのため、銀行が行っている業務、仕事は日々変化していますが利用者側としては利便性が高まっている状態といえます。
銀行の新たなビジネスモデルとして、オンラインの活用やコスト削減への積極的なアプローチが見られるためです。
特に、キャッシュレス化の進展は銀行の業務に大きな影響を与えています。
キャッシュレスが与える経済の変化
現金を使わず電子マネーなどで買い物の支払いや決済を行うことを、キャッシュレスと呼びます。
キャッシュレス決済の普及した社会がキャッシュレス社会です。
世界的にも急速に進展しているキャッシュレス化により、銀行は決済手段の提供方法を変化させたといえるでしょう。
個人の消費支出額ではキャッシュレス決済は70%を占めており、5年間で20%近く増加しています。
急速に浸透している変化を踏まえて、銀行はキャッシュレス社会における適切なサービスの提供、質の向上に取り組むことは必須といえるでしょう。
デジタルウォレットやオンライン決済は、現金を扱うことのリスクや手間を減らし、消費者にとっても便利なものです。
銀行は、キャッシュレスがますます浸透するようなサービスを提供する必要があるでしょう。
また、キャッシュレス化の波に乗れない利用者をとりこぼさないように応える経営がより一層重要になっていきます。
まとめ 銀行は金融経済に関わる組織
銀行は、預金や貸出、決済といった基本的な機能を通じて、経済活動を支える重要な役割を担っています。国、企業、個人どの立場からも銀行がなければ、経済はストップしてしまうことは明白です。
また、キャッシュレス化の進展により、銀行業務は進化し続けています。
金融経済の健全な発展を支えるためにも、銀行の安定と進化は欠かせない要素といえるでしょう。